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株式会社 板野酒造本店

株式会社 板野酒造本店
取締役 板野 桂子 氏

足守川のほとりで明治3年から代々続く酒蔵「板野酒造本店」。
取締役 板野 桂子氏にお話をお伺いしました。

豊臣秀吉が「備中高松の水攻め」の水源に用いたといわれる足守川。伏流水をくみ上げると美しい青色をしています。
この特別なお水と岡山県産のお米を使用し、創業から現在まで、岡山発祥の備中杜氏のみで、伝統の日本酒造りを守り続けています。
「備中流」と呼ばれる職人の熟練の技と勘で、手造りで仕込まれる酒は、岡山県の中でも珍しい甘口の日本酒です。

現在の杜氏は、五代目社長 板野文伸氏。
三代目当主(父)の逝去にともない、仕事がしやすい一番近い高校に通いながら蔵仕事を始めました。
職人の背中を見て技術を学んだ、生粋の「職人杜氏」です。

「杜氏は自然と対話しながらの酒造りをとても大事にしています」と語ります。
毎年異なる自然の中、常に麹と対話しながら仕込みをおこなっています。

しんとした静かな蔵の中で、ぱちぱちと聞こえる音は、まるで発酵する麹たちがしゃべっているようでとても神秘的です。
その声を聴き、発酵しているつら(表面)を見てまたそれにこたえる。
様々な声や表情を出してくれる麹と真摯に向き合うという、まさに「対話しながら」の酒づくりです。

いつもは物静かな杜氏も、仕込み時期に蔵を離れることがあった時には、わが子を育てるように、毎日写真を送らせて
状態を確認していたそう。

このような杜氏の姿勢が、板野酒造本店の本来の味を守り続けているのです。

江戸時代に建てられた白壁の酒蔵自体もまた、代々受け継がれる味の大きな要素となっています。
蔵の天井から床まで壁という壁に入ったすくも(もみがら)は、蔵が自然に呼吸することができ、温度や湿度を調整しています。
蔵に住みついている菌も、杜氏とともに伝統の味を受け継いでいます。

仕込み中の蔵では、扉を開けた瞬間が爽やかな吟醸香が立ち込めていました。

こうして丁寧に作られた板野酒造本店のお酒には、この土地ならではの名前がつけられています。

蔵の裏にそびえる山は「二面山(ふたもやま)」と呼ばれ、豊臣秀吉が毛利氏と戦ったときに陣を置いたと古文書に書かれています。銘柄「二面(ふたも)」はこの古い地名が由来です。

一番人気のお酒は「鬼ノ城(きのじょう)」。
この辺りにも温羅(うら)がおりてきたという伝説から名付けました。
鬼ノ城純米吟醸はフルーティーな香りと米の旨みが味わえる逸品です。

※温羅・・・鬼とされる伝説上の人物

板野酒造本店では2014年ごろから海外への展開を始めました。
しかし当時は輸出している蔵は少なく、海外への展開ノウハウがなく大変苦労しました。その後、岡山県の酒蔵と備前焼作家、雄町米(岡山特産の酒造好適米)の生産者が集結して海外プロモーションを行う組合に加盟するなど積極的に活動を続けオーストラリアへの販路ができました。その後も、
香港での展示会で、かなり評判がよかったことから
今では、中国、香港、フランス、イギリス、台湾など各国へ広がっています。
ワインを飲まれる海外の方に今一番人気なのは「つるし備前焼」という、熟成させた日本酒です。これはモロミの中に備前焼を吊るし入れ発酵させていてふくらみのある味わいが特徴です。

お酒は、酒蔵に隣接した直売所 上之蔵(かみのくら)や、たまルンモールで購入できます。

上之蔵ではお酒はもちろん、調味料や地元のものもあり、お酢やみりんなどは、こだわったものを置いています。

おすすめの「二面 白騎馬」純米大吟醸 を思わず購入してしまいました。とてもフルーティーで華やかだけどお米のうまみがしっかりとした味わいで、しゅわしゅわが心地よく、おいしくいただきました。

最後に

「地酒とはその地方の食べ物に、一番おいしく合うように進化したものだと思っています。
岡山の地のものを食べる時には、ぜひ板野酒造本店のお酒をお召し上がりください。」

と、優しい笑顔で語ってくださいました。

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